喫煙歴20年。禁煙外来でタバコをやめた体験談。セブンスターに別れを告げる

タバコの依存性は、吸っている本人が一番良く知っている。吸うときは簡単。でも、やめようと思ったところで、すぐに実行できない。
喫煙歴20年の僕が、何故タバコをやめようと思い、禁煙外来に通って禁煙を成功させたのか。また禁煙から1年以上経った現在どうなっているのか。これから禁煙をしようとしている人に向けて、僕の経験を記録として残しておきます。
タバコを吸っていた頃の話
20歳とともに吸い始めた
大学受験で浪人をした僕は、入学早々に20歳になった。当時は軽音楽サークルに所属し、バンド活動に明け暮れる日々だった。
吸い始めたきっかけは、はっきりと覚えていない。ただ、毎年東大・京大の合格者が出るような進学校に通っていた友だちが、高校卒業とともに就職し、一緒に遊ぶようになった影響が大きいと記憶している。彼もバンド活動をしていて、朝までギターセッションをしていたのは良い思い出だ。
大人になったら酒を飲みタバコを吸う。それが自然な考えだった社会情勢も、タバコに手を出した1つの要因だろう。
手軽に買えたタバコ
当時はミレニアムや2000年問題などが騒がれた時代。周りは喫煙者ファーストな環境が揃っていた。大学のエレベーターホールに灰皿があり、中庭のように空が抜けていた食堂の一角でもタバコが吸える。駅のホームには喫煙所、歩きタバコの光景は当たり前。
セブンスターは1箱250円。今の半額以下である。塾講師バイトのおかげで、経済的負荷も少なかった。
やめる理由もなければ、禁煙を意識するきっかけもない。だから吸っていた。一度口にしたら最後、継続するしか選択肢がないと思わせるのがタバコの怖いところである。
時代の流れが変わってくる
社会人になっても周りは喫煙者ばかり。ストレスが多いシステムエンジニアの職種を選んでしまったのが、僕のタバコ生活に拍車をかける。
顧客に無理な要求をされたストレスで吸い、理不尽な上司からのストレスで吸い、システムのアイデアが煮詰まると吸う。「喫煙所には情報が集まる」と言われていたほどで、タバコを吸わない非喫煙者さえも、上司の話を聞きに喫煙所へ顔を出していた。
1日1箱。自由なお金が増え、吸う本数は増えるばかり。しかし時代は、少しずつ非喫煙者への追い風が強くなっていく。
- 2003年 都内近郊の私鉄が喫煙場所を全廃
- 2009年 首都圏 JR 構内が終日禁煙へ
- 2010年 タバコ各種銘柄が100円~140円の値上げ
- 2011年 東海道新幹線の自由席が全車両禁煙に
- 2018年 セブンスターついに500円になる
- 2020年 東京都受動喫煙防止条例が施行
これだけではない。会社のテナントが入るビルの喫煙所は減少傾向にあり、ビル全体が禁煙になるケースも珍しくない。
2010年10月に実施された大幅な値上げで、喫煙率は大きく減少。ただ僕の周りでは、喫煙者が減った印象はない。唯一年を追うごとに、新入社員の非喫煙率が増えているのは実感できた。
40歳で禁煙を決めてから成功するまで
タバコをやめるきっかけ
現在、僕はフリーランスとして活動をしている。開業届を提出してから5年。好きな仕事、得意な仕事で生計を立てている。もうサラリーマン時代のような強烈なストレスはなくなったにもかかわらず、タバコの習慣は切り離せなかった。
なぜ吸っているのか?そう問われても「吸いたいから」といった安直な答えしか出てこない。依存性の高いものを20年間吸い続けたせいで、タバコを吸う理由すらも答えられない人間になってしまった。
そんな時に1人の友人が禁煙外来でタバコをやめたと知る。
その友だちは、待ち合わせすると必ず歩きタバコで現れるような、タバコ癖の悪い男だった。喫煙禁止区域の文字が読めないのか?と思うくらい、そこかしこで吸っている印象しかない。仕事が出来るのが唯一の救いで、大手企業に転職してベンチャー企業の立ち上げに携わるほどの成功を収めている。タバコの話を抜きにしても、彼の話だけで記事が一本書けるほど一目を置く友人だ。
彼がタバコをやめた知らせは、天変地異が起こったのかと思わせるほど驚いた。そんなに禁煙外来のパワーは凄まじいのか。この衝撃が僕にとってターニングポイントになった。
じゃあ自分もタバコをやめよう。
東京都受動喫煙防止条例の施行が迫る2020年初頭。通っているバーも、お世話になっている居酒屋でも全面禁煙になってしまう。飲み屋でタバコを我慢するストレスに耐えられる自信がない。そんな社会情勢が後押しとなり、同じ喫煙者である妻もタバコをやめると言い始めた。
2人で禁煙するなら心強い。身近な友人が禁煙できた実績をなぞるように、僕と妻は保険が適用される禁煙外来への通院を決めたのだった。
禁煙外来の概要
詳しく知りたい方は、リンク掲載したファイザーのサイトを参考に。ここでは箇条書きで簡単にまとめておく。
- 禁煙外来を行う病院を探して予約
- 問診で禁煙の意思を確認しスタート
- 通院は合計5回
- 期間は12週間
- 費用は保険適用で約2万円
- 最大半年まで保険が適用される
禁煙外来を行う病院探し
禁煙外来は、特定の科で行われるものではない。まずは禁煙治療を行っている病院を探すところから始まる。
検索サイトで「○○市 禁煙外来」のように検索すれば、近所の病院が見つかる。自治体によっては、禁煙外来に対応した病院のリストをホームページに掲載している。
通院回数は5回。期間は12週間で終わる。20年間吸い続けてきたのを、たった12週間で終りを迎えられるのか?半信半疑である。
禁煙外来は、特定の薬を処方するために存在するようなもの。病院によって大きく質が変わる治療ではないため、自宅から一番近い病院を選択。事前に電話予約をする。
禁煙外来開始
ニコチン成分が入った肌に貼るシールが処方されて、徐々に吸わない習慣を身につけていく。そんなイメージを持っていたけど、現実は全く違うものだった。
処方されるのはニコチン成分が入っていない、チャンピックスと呼ばれる薬。簡単に説明すると、ニコチンを吸った時に得られる快楽をこの薬で誘発するらしい。
最初の1週間は、薬を飲みながらタバコを吸うのが許される。2週目から禁煙が本格的に始動し、薬の量が倍増する。
チャンピックスの効果が凄まじい
僕の場合、薬を飲み始めた最初の3日で、タバコを吸う本数が1日2本になった。1日1箱20本も吸っていたのに、薬のパワーがえげつない。具体的には、薬の影響でタバコが不味くなるのだ。
例えるなら、パンの真っ黒に焦げた部分をコーヒーに入れたような味。ただ苦いものを吸っているようなイメージ。2口吸って火を消すほど、口に入ってくる異物感がすごい。
薬を飲み始めて5日目には、タバコの本数が0本になった。ここで禁煙生活がスタートする。24時間1本もタバコを吸わないのは何年ぶりだろう?全く記憶にない。
妻はそこまでタバコが不味くなる感覚がなかったようで、きちんと最初の1週間タバコを吸って、2週目から禁煙がスタートした。
そして禁煙とともに、2人同時に訪れる体調不良。
チャンピックスは副作用が激しい
処方時に医者から説明を受けるのだが、チャンピックスは副作用の影響が多岐にわたる。
- 吐き気がある
- 胃がやられる
- 夜眠れない(不眠症)
- 変な夢を見る
- 日中の眠気や頭痛
- 便秘気味になる
- メンタルがやられる
ニコチンに変わって気分を良くさせるため、うつ病などの精神疾患時に処方される薬と効果が似ている。精神的に揺さぶられるような気分になるのが辛かった。
更には日中眠く、夜眠れなくなる。嫌な夢を見る機会も増えた。薬の影響で、常に気だるさが伴う。気分的に、うつ病が誘発されるな感覚に陥った。
タバコをやめる強い意志がないと、この副作用に耐えるのは大変だ。僕は在宅ワークのフリーランスだったから、気分が悪くなったら横になり、復活したら仕事に戻るのが簡単にできた。パート務めだった妻は、体調不良になるのを見越してシフトを減らすこともあった。
人によって症状の重さは違うようだ。禁煙外来経験者の口コミを参考にすると、副作用の辛さは総じて同意見だった。
3日間 (72時間) の壁がきつい
チャンピックスの影響で、タバコを吸わなくてもニコチンの離脱作用は弱まっている。しかし毎日1時間~1時間半の間隔で吸い続けてきた習慣を、スパッと切り離す生活に慣れない。タバコを吸いたい気持ちとソワソワする気持ちが行ったり来たり。自宅で喫煙場所としていた換気扇の下を行ったり来たり。
一段落したらデスクから離れて、タバコを吸う場所へ移動する。実際に吸わなくなっても、禁煙外来中はこのルーチン化された動きは続いた。そのうち1杯の水を飲むようになり、チョコレートを1かけら食べるようになり。と、代替のものに置き換えることで、気分的には楽になった。
禁煙を始めて最初の3日はつらい。薬の影響で吸ったら不味い。でも吸いたい気持ちは消えない。仕事が手につかないくらい、不安定な3日だった。そして72時間を超えると一気に楽になる。
もしこれから禁煙外来に通うのであれば、最初の3日間は仕事を休むくらいの余裕があると安心だ。
体重が増えるのは必然か?
今まで喫煙に当てていた時間が、手持ち無沙汰になる。吸いたい気持ちは減っても、何かを口にしたい欲望が残る。そして我慢の代償として、おやつを食べる機会が増えてしまった。
タバコの代わりにおやつ。
急にカロリーのあるものを摂取し始めたら、結果がどうなるか容易に想像がつく。禁煙外来の治療の一貫として、毎日体重を測っていた。体重が右肩上がりなのは言うまでもない。禁煙すると太りやすくなるのは、食事が美味しく感じるのが主な原因ではない。
タバコの代わりにカロリーを摂取する人が多いから。
食べた分、運動して消費する方法もある。しかしチャンピックスを飲んでいると、体を動かす気力も奪われる。12週間、黙って体重が増えるのを耐えるしかない。結局 3kg 近く増えた。
禁煙外来中でもタバコは吸いたくなる
チャンピックスのような強烈な薬のおかげで、タバコを吸う一歩手前で我慢できている。吸いたい気持ちは消えないものの、禁煙からの経過時間に比例して、少しずつニコチンへの依存が弱まっているのを実感している。
1か月経っても吸わない生活に慣れない。2ヶ月経っても状況は変わらず。それでも気分的には「禁煙」ではなく、単に吸ってないだけといった感覚になってきた。4回目の通院を迎える頃には、自分の中では禁煙に成功した実感もあった。
薬の副作用に変化はない。悪くならないが良くもならない。
副作用に耐え切れず薬の量を減らす
最後の4週間は、大幅にチャンピックスを飲む量を減らした。タバコをやめられた実感から、勝手に飲む量を調整したわけではない。精神的な刺激をする副作用が酷すぎて、仕事に影響が出始めたのだ。
医者に相談し、薬の処方量はそのままに、状況に応じてチャンピックスを飲む量を減らした。しかし完全に飲まない選択肢はおすすめできないと言われた。途中でやめると禁煙の成功率が大きく下がるらしい。統計的な情報なのか、情報源は忘れてしまった。
そう言われても、副作用が辛い。チャンピックスの半減期は20時間程度。毎日 2mm 飲んでいいたら、丸1日飲まなくても血中には薬の成分が残っている。そこで1日、薬を飲むのをやめてしまった。
結果、体は楽になった。
このとき、東京都は新型コロナウイルスによる1回目の緊急事態宣言の真っただ中。外出を控える生活が続き、タバコを吸う人を見かける機会が完全になくなった。視覚から他人がタバコを吸う姿がいなくなるだけで、メンタル面でも一気に楽になる。タバコをやめるにはベストなタイミングだったかもしれない。
最後の2週間、薬は一切服用していない。薬をやめても、誘惑がなければ禁煙は問題なく続けられる。もし吸いたい欲望に負けそうになったら、薬を飲めばいい。これは最終的に医者からも言われた。残った薬は辛くなった時に飲めばいいと。
禁煙に成功しても喜びはない
通院によって強制的に始まった僕の禁煙生活。地獄のような副作用に苛まれながらも、挫折なく無事に12週間を終えた。一緒に禁煙生活を初めた妻も、同じく12週間を乗り越えた。
もしこのまま続けたければ、あと12週間保険が適用できる。医者に言われたが、間髪入れず断った。大丈夫、もうタバコを吸わない生活に慣れたし、チャンピックスの悪夢はもう二度と経験したくない。
こんな辛い思いをするのに、保険適用期間ギリギリまで使って禁煙する人なんているのか?ただの変人じゃないか。
通院を終える頃には、日常生活でタバコを禁止している感覚はない。だから禁煙成功の喜びすらない。ただ吸ってないだけ。通院するまでは、タバコをやめる理由がなかった人。通院が終わったら、タバコを吸う理由がない人にアップデートされた。健康的な上方修正である。
禁煙外来から1年後
吸いたい気持ちはない
禁煙生活が半年過ぎたあたりから、タバコへの感情が一気に消えた感覚があった。無意識でタバコのことを考えなくなり、自分が吸っていた事実すら思い出さないほどに。そして1年も経つと、周りに喫煙者がいても全く気にならないレベルになる。副流煙程度じゃ、吸いたい気持ちは復活しない。
1本くらい吸ってもいいかな?そんな馬鹿げたことも考えなくなった。
セブンスターを20年間吸い続けた僕が、たった3ヶ月の禁煙外来でタバコをやめられた事実。自分でも信じられない。
禁煙外来に通わなくてもやめられた?
病院に行かずに禁煙は無理。自力で禁煙できる人が居るのは知っている。でも僕は無理。なぜならタバコを吸った最後の感情が「気持ちいい」だから。いくらタバコをやめても、この「気持ちいい」思い出が残っている限り、喫煙生活が復活する可能性が高い。
禁煙外来に通うと、タバコを吸っても「おいしくない」や「気分が悪くなる」といったマイナス感情が残る。そしてチャンピックスの副作用が辛い思い出も。もう2度と同じ経験をしたくない感情が、禁煙生活の継続を後押ししてくれる。
だから僕が禁煙するには、禁煙外来に通うのが唯一の手段だったと実感している。
禁煙してよかったこと
想像の域を超えるほどの良かったことは特にない。箇条書きでまとめておく。
- タバコがなくても苛々しない
- コンビニに行く頻度が減った
- 喫煙所を探すストレスがない
- 夫婦で月3万円のタバコ代が0円に
タバコを吸わないことで開放されるストレスもある。これは依存から脱しないと得られないものだ。
そして自由に使えるお金が3万円増えた。これを全額つみたて NISA にシフトするだけで、老後2,000万円問題が一気にイージーモードになる。僕の場合は個人事業主だから2,000万円じゃ足りないけど、家計の負担が軽減されるのは間違いない。
禁煙して悪かったこと
ない。
これまではストレス解消や気分転換など、理由をつけて吸っていた。でもそれは、喫煙者の言い訳に過ぎない。タバコでなくてもストレスを発散する方法はあるし、気分転換もできる。やめたところで困ることなんて1つもない。
ただ1つ、休憩を取るのが下手くそになった問題があった。目が充血するほどパソコン作業を続けたり、脚がいたくなるほどショッピングモールを歩き回る。これまで喫煙の時間が休憩を兼ねていたから、ちゃんと休む時間を作らないと体がもたないことを40歳過ぎて初めて知るという。
これから禁煙する人へ
タバコをやめるなら早いほうが良い。周りの環境が……など、言い訳しているうちは、お金を使って禁煙外来に通っても失敗に終わる。禁煙するなら固い意志が不可欠だ。
お金が掛かるのを嫌って禁煙外来を避けるのは、賢い判断とは言い難い。嫌な思い出とともに禁煙したほうが、再復活のリスクを大幅に減らせる。禁煙外来を利用したほうが、結果的に安く済む。
チャンピックスの症状は人によって異なる。だから僕の情報を鵜呑みにしないで欲しい。病院に通っているのだから、状況に応じて医者に相談すればきちんと対応してくれる。
最後に。
禁煙してよかった。これだけは言える。1年経った今でもそう思う。